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男性のお洒落を「K値」で指南『大人のための私服の教科書』

大人のための私服の教科書 大人のための私服の教科書
久保田卓也

飛鳥新社 2013-11-16
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「キュッ・ドーン!」の法則


・色のメリハリ「スッ・スッ・バーン!

・無地柄のメリハリ「ムジッ・ムジッ・ガラッ!

・シルエットのメリハリ「キュッ・ドーン!

・値段のメリハリ「ヤスッ!ヤスッ!タカッ!

・ブランドのメリハリ「ユニッ・クロッ・ヴィトン!


 これは本当に大人向けのお洒落指南書?著者はジョジョのファン?どう突っ込めば良いのでしょうか(笑)
特にオチの「ユニッ・クロッ・ヴィトン!」はAAがつけばネットでテンプレになりそうな
香ばしさを放っておりますが、終始このような調子で著者オリジナルのお洒落理論が展開されるのが
本書『大人のための私服の教科書』です。表紙は他の大人向けのお洒落指南本のように硬派。
しかし中身はネタ色が強く軟派です。良く言えばカジュアルで読みやすい一冊。



 著者はパーソナルスタイリスト、ファッションプロデューサー、ファッション専門学校の講師として
活躍されている久保田卓也氏(フランソワ久保田)。本書はその講義をテキスト化したもので、
コギメン(小奇麗なメンズ)を目指すというもの。


 特徴としては、いわゆる「センス」を「K値」という数値に置き換え、
足し算と割り算でお洒落に必要なバランスをはじき出すという斬新な手法を取っています。





■K値とは何か



この講義ではその「服の清潔感」の値を「カッチリ、すっきり、さっぱり、トラッド(トラディショナル)な感じ」
ということで、K値と呼ぶことにします。Kは「カッチリ」のK。
<中略>スーツ姿の男性はまさに「カッチリ、すっきり……な感じ」の塊。
先ほども言ったようにこの感じを表す値を「K値」とします。
K値は1~10までの10段階。最高にカッチリした雰囲気のK値を10とすると、
スーツはまさしく「10」なんですね。オン、オフでいうところのオンの状態。<中略>
K値が1 (1K)は、カジュアル、ラフ、オフな格好を指します。
皆さんオフの日はどんな服装で過ごしてますか?
ジャージや上下のスウェット?そう、まさしくその部屋着の格好が1Kなんです。


 「クラシック(ドレス)」と「カジュアル(スポーツ・ワーク)」という軸でアイテムを捉え、
その両者のバランスが6~7Kくらいに収まるよう調整する。著者が指南するお洒落のコツです。


 なぜ6~7Kなのか?それは女性にモテるから。単純明快ですね(笑)
逆に、著者曰く3~4Kくらいのバランスにダサい人が多いようです。


 計算式は各アイテムのK値のトータルをアイテム数で割るというもの。
例を挙げれば、白シャツ(8K)+ジーンズ(5K)+ウィングチップの革靴(8K)でトータル21K。
それをアイテム数で割るのでこのコーディネートだと7Kとなります。


■ファッション初心者にK値は読み取れるのか?


 各アイテムにK値を設定しそのバランスはトータルの計算で出す。面白い発想です。
ただ、一つ疑問に思うのは、ファッション初心者にアイテムのK値を読み取る
「何か」があるのかという点。アイテム固有の数値だけでなく、
シルエット、素材、ディテールでもこのK値は変わってきます。


 例えば、茶色のウィングチップとバイカラーのエナメルシューズ。
どちらも同じレザーシューズ(きれいめシューズ)という枠です。
皆さんはこれらのK値がわかりますか?


 本書では当たり前のようにウィングチップ8K、バイカラーエナメル9Kと出てきます。
バランス感覚に長けたセンスのある人はこの数字をビシッと当てることができるのでしょう。
しかし、できないから、センスがないと自覚しているからこそお洒落のハウツー本を読むのです。
これをカバーするには知識という名の薀蓄しかありません。


 まずはウィングチップ。メダリオン(飾り穴)はカントリーシューズとして
雨の日の防水と通気性を求めた結果生まれた意匠です。これで-1K。
色が茶色というカントリー色なので-1K。ドレスシューズ(ビジネスシューズ)という
10Kアイテムから2Kを引くので8Kです。


 次にコンビのエナメルシューズ。エナメルは夜の正装用のシューズに使われる素材です。
女性のドレスの裾が男性の靴墨で汚れないよう素の状態でピカピカにしておいたのです。
もちろん正装用なので10K。これにコンビというオシャレ要素(カジュアル要素)が入るので-1Kで9Kです。



 他にも7Kのホワイトジーンズに対し5Kのブルージーンズ。8Kのカンカン帽に対し5Kのキャスケット。
ツーポイントのメガネ9Kに対しオーバル6K等々。服の値段を当てるのさえ難しいのに、
服のK値を読み取れるお洒落ビギナーが一体どれだけいるのでしょうか。


 各アイテムの数値を2も読み間違えれば全体のバランスも大きく崩れるはずです。
そう考えると、著者の理論がどれだけ通用するのか私にはちょっと想像がつきません。



 一応、本書にはTPO別のK値、ショップ別K値、一部アイテムの具体的なK値も掲載されているので、
ファッションビギナーはまずはそこから入れということなのだと思いますが・・・。



■オススメブランドと危険ブランド


 「ファッションセンス」を具体的に言葉にして指南する。
なかなか出来ることではありません。その点は立派だと思います。


 もう一つ本書で凄いと思ったのが、著者のセンスを包み隠さず、
ブランドの取捨選択(ブランド小物編)も具体的にしているところ。



『デンジャーブランド』


ルイ・ヴィトン、シャネル、イブ・サンローラン、グッチ、プラダ、
エルメス、コーチ、D&G(ドルチェ&ガッバーナ)、ディースクエアード、
ディーゼル、ジョイリッチ


『セーフ・ブランド』


ブルガリ、カルティエ、ディオールオム、ジバンシィ、バーバリー、
アルマーニ、ヴェルサーチ、カルバン・クライン、アレキサンダー・マックイーン、
ゴルチェ、キャサリンハムネット


『オススメ・ブランド』


ミュウミュウ、マーク・ジェイコブス、バレンシアガ、ラルフローレン、
ヴィヴィアン・ウエストウッド


 著者曰く「ハイブランド」を中心にセレクトしたとのこと。
何がデンジャーで何がセーフのか。その理由は本書をお読みくださいませ。


 ブランドの線引きは著者のセンスの問題なので突っ込みませんが、
全体的にラインナップが古いと思います。
D&Gとミュウミュウのメンズはすでに終了しております。


 加えて、ジョイリッチはストリートブランド、ディーゼルはデニム、
キャサリンハムネットはどちらかといえば丸井系に分類され、
あまり「ハイブランド」のイメージはないような。


■デザイナーズスーツのセレクトから見えてくる著者の趣味


 小物編同様スーツ編も私の趣味からは外れておりあまり賛同できないのですが、
著者は大人のお洒落着としてデザイナーズスーツを勧めています。そのK値がこちら。




バーバリー、ポール・スミス 9.8K

グッチ、プラダ、アルマーニ、9.7K

ヴィヴィアン・ウエストウッド 9.5K

トムフォード 9.3K

ギャルソン 9.1K


 トムフォードやヴィヴィアンはK値が少し低いので、
比較的若い人(35歳以下)にオススメだそうで、著者は特にヴィヴィアンの黒無地や細ストライプを推しています。


 おそらく、メジャーどころのブランドを並べたのでしょうが、このラインナップも
よくわからないなというのが率直な感想です。ファッションビギナーにトムフォード!?と驚きました。


 ファッションよりスタイルを重視するトムフォードはこのラインナップでは浮いており、
クラシックファンならおそらくトムフォードのK値を一番高く設定するはずです。
そしてあの太いラペルは貫禄が出てきた大人こそ似合うと判断すると思うのですね。



 ブランドのラインナップも今ならアメトラ、例えば、トムブラウン、
ラルフローレン、ブルックスブラザーズ、バンドオブアウトサイダーズ
あたりを入れるのが適当でしょう。クラシックファンならゼニア、ボリオリ、
ラルディーニ、エイドスでしょうか。


 しかし、それをやらなかったのは本書の軸は「モテ」にあり、
あくまで軟派なお洒落指南本だからです。著者は硬派なファッション(クラシック)が苦手なのだ推測しますが、
全体的に、ファッション誌だとGainerに近い感じです。


 硬派でウンチクでめんどくさいファッションよりも感覚で選び女性にモテたい。
そういうアプローチでお洒落を頑張りたい方は読んでみると参考になるかと思います。





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