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創刊の社会史 (ちくま新書) 難波 功士 筑摩書房 2009-01 |
本書『創刊の社会史
』は雑誌の創刊号を読み解きながら、70年代以降の若者文化をたどる一冊。
著者は関西学院大学教授の難波功士氏。前著『族の系譜学―ユース・サブカルチャーズの戦後史』を雑誌の創刊号に絞り、内容を新書サイズにまとめ論じた、前著の入門書という感じでしょうか。
登場する雑誌は、anan、nonno、JJ、POPEYE、MEN’S NON-NO、egg、小悪魔ageha、Hana★chu、MEN’S-KNUCKLE、BOONなど。本書にのっとり、創刊号とファッションの流れをごくごく簡単にまとめてみます。
・1970年、平凡出版(現マガジンハウス)から平凡パンチの女性版であるananが創刊する。フランスのエルと提携したファッション誌。タイアップ、占いページ、「かわいい」にこだわった誌面など、今の女性誌の原型を作る。
・71年6月、ananの対抗誌として集英社からnonnoが創刊され、アンノン族ブームが起きる。nonnoはananの尖りっぷりについていけない人の受け皿的雑誌であった。nonnoの優しさ(初心者向け)はこの頃から。
・75年6月、光文社からJJが創刊される。ニュートラ・ハマトラブーム(≒お嬢様ファッション・コンサバ系)を巻き起こす。実は、すでにananが74年頃から神戸嬢のファッションを取り上げていたが、「ニュートラ=JJ」として浸透していく。それに伴いananはニュートラ一辺倒をやめ、80年代に入ると「ニュートラ(モテ志向)のJJ VS ドメブラ(ファッション志向)のanan」という構図になっていく。
・80年代に、ニュートラの流れから、女子大生ブームが起こる。JJの類似誌として、82年1月号にCanCam、83年7月にViVi、ちょっと遅れて、88年7月号にRayが創刊。赤文字系カルテットの完成である。
・一方、メンズはというと、76年の夏にPOPEYEが創刊。MEN’S CLUBのような教条主義の堅苦しいアイビー(トラッド)ではなく、もっとカジュアルなプレッピーやLAカジュアル(西海岸のカルチャー)を日本に持ち込む。硬派ではなく軽佻浮薄のノリである。スニーカーブームやサーファー系(LAカジュアル)の原点はここにある。もっというと、POPEYEの前身Made in USA catalogにまで遡ることができる。
・79年7月、POPEYEの対抗誌としてHot-Dog PRESSが創刊。再びアイビーを仕掛ける。第3次アイビーブームが巻き起こるが、それがレディースにも飛び火し、流行として消費されすぐにブームは終焉を迎えることに。
・ここで女性誌出世魚にも触れておこう。77年3月、ananの受け皿的雑誌(卒業後の雑誌)としてクロワッサンが創刊。この年、集英社からMORE(nonnoの受け皿)も創刊。女性誌出世魚の先駆けである。ちなみに、女性誌出世魚の中でも有名なのは光文社だろう。JJ→CLASSY.(84年)→VERY(95年)→STORY(02年)のギラギラ路線はあまりにも眩しい。他にも、CanCam→AneCan→oggi→Domani→Preciousの小学館出世魚、nonno→MORE→BAILA→LEE、marisol→eclatの集英社出世魚もある。
・で、80年代の女性誌に話を戻すと、ニュートラと別の流れとして、POPEYEの女性誌版(ガールフレンド誌)Oliveが82年に創刊される。西海岸文化(アメカジ)をレディースに持ちこんだり、ガーリーという分野を開拓したり、フレンチカジュアルの礎を作ったりしながら、「オリーブ少女(リセエンヌ志向)」として一世を風靡する。Olive以降、カレ誌・カノジョ誌が多数登場したり、女性誌からサブカル色を強めた雑誌が登場したり、ガーリー分野を開拓したことにより、少女の世界が細分化(ティーンズ誌が賑わっていく)していくことに。
・POPEYEの全盛期が終わりつつある86年、MEN’S NON-NOがnonnoのカレ誌として登場。創刊号は30万部を完売しDCブームを巻き起こす。実は、80年代前半からDC系(デザイナー&キャラクター系)の新しいメンズブランドが次々と誕生し、すでに土壌はできあがっていたのだが。ちなみに、類似誌FINEBOYSはMEN’S NON-NOの一ヵ月前に創刊している。この年、男性ファッション誌が次々と創刊したことにより(BOONも創刊している)、朝日新聞は男性のアンノン族化を「新・アンノン族化」として
取り上げ憂えている。この時代、まだまだ、男性がオシャレなんて、という価値観であった。この後、渋カジブームが訪れ、ストリートファッションの90年代に突入。
・88年宝島社からCUTiEが創刊される。その後も、smart(95年)、spring(96年)、sweet(99年)、mini(00年)、in Red(03年)と順調に勢力を拡大。世に言う、宝島社&裏原無双である。宝島社が打ち出す「サブカル×ファッション」は大ブレークし、CUTiEの類似誌SEDAが91年、BOONのカノジョ誌Zipperが93年、SMARTの類似誌GET ON!、COOL TRANSが共に95年、street jackが97年に創刊している。2000年に入り、ストリートファッションに限りが見えてくるが、2002年にJILLEとP.Sが、翌年にはSOUPも創刊されている。
・90年代はストリートファッションが全盛だったが、もう一つ忘れてはいけないのがギャルである。バブル崩壊でボディコン(≒女子大生ブーム)が衰退しつつある中、女子高生がそれに代わるように、元気にセクシーになっていったのである。ギャル誌といえば、egg(95年創刊)、Cawaii!!(96年創刊)、Popteen(80年創刊)の3誌が有名だろうか。この3誌は対抗誌という次元を超えた仲の悪さで、コギャル三国志をやっていたくらいなのだが、この3誌が中心となってギャル文化を広めていった。ギャル雑誌は90年代に多数創刊されたが、その源流は80年に創刊されたPopteenだろう。POPEYEが広めた西海岸ブーム(LAカジュアル)に、ヤンキー要素とセックス記事を盛り込み人気を博した雑誌である。
83年に少女誌の性表現の過激さを非難され、90年代までティーン女子の総合誌をやっていたのだが、版元が現在の角川春樹事務所になった頃(94年)には、すっかりギャル路線になっていたようである。
・ギャルブーム(コギャルブーム)は96年に全盛を迎え、黒ギャルは徐々に衰退していくのだが、2000年に入ると、今度はお姉ギャル誌が登場し、戦いの場を90年代にギャルの洗礼を受けた「アラサー(アラウンドサーティー)」に移していく。Scawaii!!(00年)、BLENDA(03年)、
GLITTER(04年)、GLAMOROUS(05年)、GISELe(05年)と次々と創刊され、多数のギャルの目線を上に持って行った。2006年には白ギャルを究極にまで高めた雑誌、小悪魔agehaが創刊。ギャルと親和性の高いキャバクラ嬢に目をつけ、新たにキャバ系という分野も開拓した。
・ギャルの主戦場が上にいくと、盛りあがってくるのがその下のローティーン誌。その先駆けが、高校生向けのLemonから生まれた「女の子が最初に手にする女性誌」というキャッチフレーズのピチレモンである。ピチレモンは、95年にLemonが休刊してからファッション誌としての色合いが強くなっていく。その後、97年にnicola、01年にラブベリー、
03年にHana★Chuが創刊され、ローティーンのオシャレも過熱していく。この分野も飽和しつつあるので、今後はさらに低年齢向けの雑誌が登場し、ファッションの若年化は進むのかもしれない。
かなり端折りましたが、他にもギャル男文化(盛王GUYとか)やアウトロー誌にも著者は言及しています。それでも、Hanako族、カラス族(≒モード系)、渋カジ、ちょいワル、ヴィンテージ好きオヤジ(フリー&イージー系)、はごっそり抜けていますし、POPEYE以外の男性誌はあまり大きく取り上げられていないので、女性誌に興味がないと、ただの資料の列挙なのでつまらないかもしれません。ただ、私がまとめたような話に興味がある人には、たまらない一冊だと思いますよ。当たり前ですが、本書にはもっと詳しいことが書いてありますし、雑誌の数も私が取り上げた倍以上出てきます。参考文献のページを見てもわかるのですが、とにかく大量の資料が登場するので、雑誌のコピーや発行部数などに興味がある人には特におすすめです(参考文献の数が3桁です)。他にも、「CLASSY.にピリオドがつくようになったのは85年1月号から」「女の子と女性の間がジッパー(Zipper)」「Scawaii!!のSはSUPER、SEXY、SPECIAL、卒ギャル(ガングロからの卒業)のS」「nonnoの最高発行部数は147万部(94年)。あのCanCamの全盛期の2倍」「最厚創刊号はPINKYの3.3㎝、最重量はAneCanの2190g」など、話を脱線し、うんちくを語り始めるのも面白いです。さすが、創刊号マニアと著者自ら述べるだけあり、マニアックな話も多いのですが、雑誌好きなら著者にシンパシーを感じると思うので、是非、読んでみてください。読み始めたら止まらないと思います。

コメント
コメント一覧 (5件)
これは買いに走らなくては。
このブログに感化されてすっかり女性誌好きになってしまいました…
daleさんは毎月何冊くらいの女性誌を購読されているのですか?
リアルタイムに知らないからよくわからない(笑)
>Firefoxさんへ
少なくとも20冊は目を通しております^^;
精読するのは5冊くらいですけど。
>幸福な王子さんへ
僕もリアルタイムに知らないので、古本屋で漁っております(笑)
20冊も!
学生なのでそんなに買えないです;
とりあえず僕もcancamとanecanの定期購読から初めて女性誌ウォッチャーになろうかと思うこの頃です。
20冊も!
学生なのでそんなに買えないです;
とりあえず僕もcancamとanecanの定期購読から初めて女性誌ウォッチャーになろうかと思うこの頃です。
>古本屋で漁っております
昔のファッション誌って古本屋にありますか?
古本屋というと小難しい内容のものばかり(文学とか歴史書とか)ある気がするのですが…