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愛されるモード 中野 香織 中央公論新社 2009-02 |
日経新聞に連載されたコラム「モードの方程式(主に2005年以降に書かれたもの)」からまとめられた『愛されるモード』。第一弾が『モードの方程式
』で第二弾が『着るものがない!
』、
そして本書は第三弾に当たるわけですが、いつも通り、タイトルからはあまり想像できない内容なんですよね。本屋に行けば、女性向けのオシャレ本に混ざって置いてありますが、オシャレや恋愛のハウツー本でなければ、コレクション評(モード批評)でもないという(笑)どちらかといえば、男性向けのうんちく本だと思います。落合氏の本が好きな人には特にオススメ。
著者は中野香織氏で、クラシック好きなら、あぁ、『性とスーツ』や
『スーツの神話』の人か、とおなみじだと思いますが、本書のノリも同じようなものです。服飾史家的な視点で、うんちくを交えながらトレンド(モード)に言及していく形。コラムは「雑学・時事ネタ」とそれに関連する「服のうんちく」と「オチ」で構成されていますが、あとがきで著者が自ら述べているように、関連付けが強引で考察やオチもわりと適当です。だが、それがイイ!(笑)男性の服飾評論家の書くうんちくコラムは妙に圧迫感があって息苦しくなるのですが、本書は軽快な語り口なのでそれがないんですよね。あくまで、浅く広く緩くファッションに言及していく形なので、ファッション好き以外も気軽に楽しめる一冊になっております。全88話の中のどれかは面白いと思うはず。
<目次>
第一章 ファッションと政治
第二章 どんなものにも知られざる物語がある
第三章 流行はこうして作られる
第四章 流行が映し出す、現代社会
第五章 悩ましきは社交
第六章 あまのじゃくなファッション心理
第七章 日本発、世界へ
第八章 迷える現代男性とファッション
第九章 特殊なスタイルのなぞ
なんと、今作にはメンズファッションの章が設けられています。ここ数年は、メンズファッションが注目を集めているので、当然といえば当然ですが、とりあえず、この章で面白かったのが「男の香りのルーツ」。
香水のうんちくといえば、オーデコロンの由来(ケルンの水とナポレオン)、ハンガリー水(世界最古の香水)、香料の話(例えば、アンバーはクジラのゲロとか)をよく聞きますが、同じ香料の話でも、もう一歩踏み込んで言及しているんですね。
まさにこのシダブームと時を同じくして起こっているのが、ダークスーツの普及なのですね。ヨーロッパの男性のスーツが黒一色になっていき、それとともに、近代の「男らしさ」のイメージが確立していく。シダブームとダークスーツの普及は、偶然の一致かもしれない。だが、スーツを着る男の「男らしさ」に香りがあったとすれば、それはシダの香り・・・と想像したくなる。その香りは実際には存在しない、想像上の、人為的な、創作物。
香水で「男の香り」といえば、一般的にフゼアと言われています。フゼアはフランス語のフジュールの日本語的発音で、植物のシダのことなのですが、実際には、このシダは使われていません。もしシダに香りがあったのなら、と作られた、フゼア系の始祖が「フジュールロワイヤル」で、香水のうんちくでよく出てくるネタなのですが、なぜ、シダなのか、なぜ、「男の香り=シダ」として広がっていったのか、に迫っているのがこのコラムです。ダークスーツの普及と関連付けるとは、
服飾史家らしい着眼点ですよね。説得力があります。
こんな感じで、服飾史家的な視点やうんちくを交えたコラムが88本収録されているのですが、他にも、「キッチュのココロ」、「ゴールデンルール」、「シルエット」、「パテントレザー」、「女性誌のお約束」なんかも面白かったです。
本書よりも中野香織氏が気になる方は、まずは、『モードの方程式
読んでみましょう。文庫版は500円と安いですし、うんちくコラムだけではなく、中野香織×栗野宏史×河毛俊作の対談も収録されていますので。そして、気に入ったら、『着るものがない』『愛されるモード』と
読んでいけばいいのではないでしょうか。

コメント
コメント一覧 (2件)
愛されモードで今日は寝る邪魔しないでねっ。
ここではお久しぶりです。
漫画と雑誌しか読まないようなブロガーも
数多く見受けられる中でのファッション単行本書評、
いつも興味深く拝見しております。
中野さんの著作は『モードの方程式』だけ読んだ事があります。
各項目4ページ程度に、読み易くまとめられていた点は好印象でした。