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繕い裁つ人(1) (KCデラックス) 池辺 葵 講談社 2011-03-11 |
どこか懐かしい町並みに響くミシンの音。ここは、祖母の志を受け継いだ二代目、
南市江が営む「南洋裁店」。着る人がお墓まで持っていける服作りを信条とする市江と、
この店を訪れる客たちとの、優しい優しい物語。
カタカタカタとミシンを踏んでいる地味なシーンから物語はスタートします。主人公は祖母から受け継いだ小さなお店でオーダーメイドの服を作っている市江。絹江(ドラマ化もした『リアルクローズ』の主人公)と似たような名前なので、こちらも地味な主人公が華やかな世界で活躍していくサクセスストーリーかな?と読み進めますと、早速、市江の洋服をブランド化し、それを世に広めたいという百貨店のイケメン社員藤井が登場します。しかし市江はそれを拒否。
藤井「人気モデルが着るだけで洋服の価値はあがるものです」
市江「自分の美しさを自覚している人に私の服は必要ないわ」
藤井「この写真で不特定多数の人があなたの服を知るようになるんです」
市江「着る人の顔が見えない洋服なんて作れないわ」
藤井「変化を恐れてるだけじゃないんですか」
市江「ちがうわ。そんなの望んでいないだけよ」
このやり取りで市江の服作りに対するスタンスがわかります。市江はコンプレックスを持っている人のために服を作ります。不特定ではなく特定の人のために。それは決してトレンドによってころころ変わる服ではなく、人と寄り添っていける色褪せない服なのです。結局、お店に足繁く通ううちに「あなたは変わらなくていい。そのままでいい」と考えを改め、自分が変わることを決意した藤井。ここまでが一話の内容です。二話からは藤井曰く「頑固じじい」の市江が客に服を仕立て、その市江の想いを読み取る藤井が翻訳係の中心となり、トレンドやファッションではない装うことの意味を読者に問いかけてきます。
「祖母がよく言ってた。お洒落は自分のためにするもの。
でも、とっておきの服はたった一人の誰かのために着るもんだって」
「10年20年おんなじ服と連れそうていけるのがどんなに幸せなことか」
「いつも華やかなのが美しいとは限らないわ」
ファッションうんちく漫画でもなくシンデレラストーリーでもない。
新しいタイプの「ファッション(洋服)」をテーマにした漫画ではないでしょうか。
『王様の仕立屋』もオーダーメイドですが、あちらは服が先で依頼人の
キャラ付けはそれから考えられている気がしますが、
こちらは服ではなく人の方に焦点を当て、
それから人と服を優しく織りなすストーリー構成になっています。
私はそんなに漫画を知っているわけではないですが、
『蟲師』に雰囲気が近いかもしれません。興味のある方は読んでみてください。

コメント
コメント一覧 (2件)
この本、気になっていたので買ってみます。
紹介ありがとうございます。
ファッションとは関係ないですが、こういう
ゆったりとした日常を大事にする漫画が
増えたように思います。
皆、疲れているんだろうか笑
[ファッション][漫画]ファッションマンガ界のダークホース、「あつらえ王子きせかえ姫」
いいかげん漫画の表紙買いにも限界がきたので、最近はファッション漫画を絨毯爆撃している。 Elasticで最近紹介されていた、新しいファッション漫画「繕い裁つ人」 http://taf5686.269g.net/article/15938237.html が大変面白そうなので、本屋をしらみつぶしにあたっている