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本当のクールジャパンを知る『世界へひらくJAPAN FASHION』

世界へひらくJAPAN FASHION ──本当のクール・ジャパンをつくる人たち 世界へひらくJAPAN FASHION ──本当のクール・ジャパンをつくる人たち
深町浩祥 新井千栄子 黒田清子 針生拓郎 西谷真理子

フィルムアート社 2011-09-16
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 クールジャパンがファッションの文脈で語られるときはゲーム・漫画・アニメなどのポップカルチャー方面がほとんどです。具体的には、kawaii、ゴスロリ、原宿系ファッション、制服。
これら変化球的なモノが日本的なファッションとしてプッシュされているので、
それが日本のファッションの強みだと思っている方も多いのでは
ないでしょうか。


 海外のファッションと正面から戦っても圧倒的に差があり、
イッセイミヤケ、コムデギャルソン、ヨウジヤマモトの御三家
以外たいしたことがないんでしょ?と。


 しかし。日本のアパレル業界の力は皆さんが思っている以上に
凄いのかもしれませんよ?素材開発、加工技術、縫製技術、
企画力、編主力など、世界に誇れる人や技術はたくさんありまして、
本書ではこれまであまり紹介されることのなかった裏方に注目し、
5人のスペシャリストの仕事論から日本の独自性や強みを探っています。



 本書を読めば、日本の文化をビジネスに変えるのに必要なのは
ゲーム・漫画・アニメばかりではないというのがよくわかるのですが、
せっかくなので、今回は5人のスペシャリスト各々の印象的な
話を紹介したいと思います。




■モデリスト:新井千栄子氏



強く主張はしないけれども、存在感がある。そこにいることを
気づかせないくらい自然でありながらも、いつも不可欠な
存在として在る。そのような存在を消した、無個性/匿名性こそが、
まさにデザインに求められる特性なのです。そのような特性こそが、
真のクリエーションを支えているのです。つまり日本人は
モデリストとして、デザインを生み出す上で最高の個性を
持っていると言えます。


 モデリストは簡単に説明すればいわゆるパタンナーのことで、
デザイナーの描いたデザイン画を立体化する仕事です。
新井千栄子氏はこのモデリストの仕事を「マルチリンガルな翻訳者」と表現しています。
デザイナー、MD、生産管理者、縫製工場の4方向から寄せられる情報を上手に
翻訳し一つの服を作り上げていく。この過程で大切なのは
多元的な価値観を理解し折り合いをつけていく能力で、
そこで日本人の欠点とされている「無個性」が強みになると説明しています。


 彫刻家に例えられることもあるモデリスト。イメージ的には
ミリ単位にこだわる職人気質のイメージが強いのですが、
実際はコミュニケーション能力の高さも必要な職だということが
チャプター1を読めばよくわかります。


■モデル:黒田清子氏



「個性を消す」というと何かマイナスの感じがしますが、
積極的に消す無です。顔をキレイに見せようと思えば
口角を上げて表情を豊かにすれば良いのですが、
だからといって服自体の美しさを表現することにはなりません。
服自体の美しさを引き出し、表すには、顔の表情は必要ありません。
そこに欲しいのは、能面のようなイメージ。その無表情な中にこそ、
日本人モデルの持つ純粋さや控えめな美が際立ちます。


 モデルとは服を引き立てる仕事です。モデルとして自己主張をするのではなく、
いかに服のイメージを印象的に残せるか。そこで必要になるのが「無」の感覚であり、
自分を消す死生観を持つ日本人はその「無」の感覚をすでに
持っているというのが黒田清子氏の主張です。


 チャプター2はスチールモデル(雑誌モデル)とショーモデルの違いを説明しながら
話を進めておりますが、いたるところから「モデルなめんなよ!」と
モデルとしての矜持が聞こえてきそうな凛とした文章です。
フィッティング時にピンで刺されるのは日常茶飯事、化粧が崩れないよう汗をかかない体質になったなど、
黒田清子氏はモデルとは服のために自分自身の身体、生命を削るハードな
仕事だと説明していました。モデルなんて容姿端麗な人が服を着るだけじゃないの?
というイメージの人はチャプター2を読めば考え方が変わると思います。
モデルについては今年『
ヴォーグモデル
』という本も
出版されましたので興味のある方はチェックしてみてください。


■マーチャンダイザー:針生拓郎氏



これからのファッションビジネスを成功に導く主役は、
もはやデザイナーや高級ブランドだけではありません。
これまでデザイナーの背後に存在していたMDの存在であり、
名も知れぬ多くのデザイナーやショップのオーナーであり、
そして、消費者のファッション編集力をうまく利用する、
匿名化のしたブランドを持つ企業が台頭し、活躍していくのです。


 MDはマーケットの動向を把握し、デザインの方向性を打ち出す仕事で、
感性と計数のバランスを取り次々と舵を切っていくアパレル業界の花形職種です。
長年マーケットを見てきた針生拓郎氏は日本のストリートスナップ
(自由な着こなし)を例に挙げ、「日本人の編集能力の高さ」が世界的に注目を
集めていることを指摘。さらに日本のように世界中のファッション編集能力が高度化すれば、
ファッションデザイナーを前面に出した個性の強い服よりも、
コーディネートを前提とした低価格高品質のベーシックな服こそ面白くなると
述べていました。早い話がユニクロですね。


 チャプター3はMUJI、ニトリ、サザビー、Beams、ユニクロ、
モノとコト、マーケットインなどマーケティングの本に
よく出てくる話がてんこ盛り。特に目新しい話はなかったのですが、
「日本人の編集能力の高さは日本の制服制度にある」という
主張は新鮮でした。ほんまかいなと(笑)


■編集者:西谷真理子氏



「フルーツ」は日本のファッションメディア界で語られることは
少なかったのですが、海外のファッション関係者に見せると、
他のどのファッション誌よりもエキサイティングで面白いという
反応がよく返ってきたものです。プロがスタイリングして、
プロのモデルが着こなすファッション写真よりも、フルーツのストリート
スナップの方が影響力がある・・・この点について、
ファッション関係者は考えてみるべきだと思います。


 「私は「モテ服」という言い方が嫌いだ」とdisからスタートするチャプター4。
言葉(コピー)、写真、企画。過去のファッション誌の優秀な誌面と比べ、
現在のファッション誌の魅力のなさや商業主義(クライアントの言いなり)を批判しており、
褒められているのはフルーツと最近リニューアルしたGinzaくらい。
「フルーツ」はシトウレイさんの師匠である青木正一氏が創刊した雑誌です。
青木正一氏は「ストリート」や「tune」も創刊しており、
ストリートスナップの先駆け的存在。日本が誇れるファッション誌が
ストスナしかないとは残念なお話です。


 チャプター4はanan、流行通信、オリーブ、荘苑、マリクレール、ハイファッションと
過去の輝かしい話が次々と出てきます。昔のファッション誌を探しに
神保町に行きたくなるレベルで(笑)


■テキスタイル企画:深町浩祥氏



そんなテキスタイルの中でも、特に日本のものは、世界的に認知されています。
高度な技術と独創性があるからです。それは伝統的に存在し、
西洋化が一気に進む明治以前から、すでにその下地がありました。
「着物(kimono)」です。「絹」「木綿」「麻」などの植物繊維を中心に、
織りや染色の技術は脈々と引き継がれていましたが、
文明開化以降の日本の産業改革は、繊維を中心とする
テキスタイル産業に始まりました。過去のイギリス、
今の中国や東南アジアと同じ流れです。そう、つまり
現代日本の礎を築いたのはテキスタイル産業なのです。


 化学合成繊維によるテキスタイルでは世界一位、
世界的な技術が従業員数名の日本の町工場で生まれ
ハイブランドにその生地を供給しているといった話まで
日本のテキスタイルの凄さが語られているのがチャプター5です。
丹後や米沢の絹織物、シャツの西脇、和歌山のジャージやパイルなど。
児島のデニムだけではないのです。



 またチャプター5は世界的に活躍するデザイナーの裏にテキスタイルデザイナーあり、
と、テキスタイルがいかにファッションに影響を与えるのかの説明もあります。
深町浩祥氏曰く「テキスタイルから宇宙を生み出す」。
読めばテキスタイルの奥深さを知ることになるでしょう(笑)
よりテキスタイルについて知りたい方は『
テキスタイルとは何か  ──隠されたメッセージへの旅
』という本も
最近出ましたので読んでみてください。



 以上。1章から4章まで見てきましたが、簡潔にまとめると、
「無個性(1・2章)」「編集力(3・4章)」「テキスタイル」が
日本の武器になるという話です。


 本当のクールジャパン。日本のアパレルの強みはどこにあるのか。
そういうのに興味のある人、特にアパレル業界を志している
学生には是非とも読んでほしい一冊です。





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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (4件)

  • 無個性の部分でボー・ブランメルを思い出しました。
    強く主張しないけど存在感があると言う所が特にですね。

  • 寧ろ一般の人に読んで欲しい
    ファッション先進国なのに日本人の『自国のファッション』に対する意識が低すぎると思うから
    日本人は日本人に厳しすぎる
    もっと誉めても良いし、誇っても良いと思う

  • “無個性〜”は業種を問わずDesignerと肩書きがつく方には常識的な考えで特別“売り”にはならないと思います。“何を今さら”感がハンパないですね。フルーツ、ストリートスナップ云々の話もよく聞く話で、古いな〜と感じます。誰も気付いてなかった、本当の意味で新しい切り口のクールジャパンの話を聞きたいですね。

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