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ファッションスキルは大人の「教養」 森井 良行 PHP研究所 2008-12-23 |
スキルというほど理詰めではなく、教養というほどうんちくもない
本書『ファッションスキルは大人の「教養」』ですが、位置づけ的には、着こなしのハウツー本よりも、ファッション自己啓発本に近い印象でしょうか。落合氏の著作ように押し付けがましくないですが、その分、内容も薄い感じ(当たり障りのない内容が多い)。
著者はパーソナルスタイリストの森井良行氏。氏のプロフィールは
Estyleで確認してほしいのですが、「モテない男のナンパ塾」のファッション講師をしていただけあり、本書もいかに女性にモテるか、という視点で全編書かれております。
女性が求めるメンズファッションとは、「カッコイイ」ではなく「カワイイ」ファッションです。<中略>女性が「カワイイ」と感じるスタイルは、「上品+遊び心ある」服装に多いと言えます。
これが本書の肝です。スタイリング例を見てもわかるのですが、要は「ゲイナー君」的スタイルです。雑誌Gainerに代表される、エレガントでスタイリッシュな感じのスタイリングを推しています。レディースでいうと、CanCam、JJ、Rayあたりの赤文字系がモテる!と力説していて、その「かわいい(上品+遊び心)」がその他大勢(著者の言う、普通・凡庸)から抜け出す秘訣であり、モテるコツである、と提唱しています。その理由として、「カワイイ」ファッションは第一印象において、女性から共感や共鳴を得やすい(緊張を解きほぐす)ことを挙げていますが、「カワイイとは幼稚で弱々しく、姿かたちが美しいもので、若い女性が時代の空気を自分自身の感受性に重ね共感できたもの」が「カワイイ」の定義だと私は考えているので、同性の女性ならまだしも、異性である男性の「上品+遊び心ある」服装をみたところで、「カワイイ」と共感・共鳴するかは疑問ですし、女性がメンズファッション(異性の服装)にまで「カッコイイ」ではなく「カワイイ(≒幼稚)」を求めているのかも疑問です。ここは本書の肝なので、勝手に決め付けず、裏付けを取ってから論を進めてほしかったところ。
個人的には、「ゲイナー君」的なキメ感が強い服装から、不自然なエレガントさと遊び心(小細工ともいう 笑)を引いた、ナチュラルなカジュアルスタイルも好感度が高いと思うのですが、どうなのでしょうか。普通を大きく逸脱しない範囲で、ちょっと地味だったり、緩かったり、突っ込みどころといいますか、改善の余地のある方が、女性は緊張しないと思うんだけどなぁ。
<目次>
第1章 モテ/非モテの超格差社会
第2章 なぜモテない男は黒を好むのか
第3章 モテる男のファッション講座
シルエット/カラーコーディネート/ディテール
第4章 モテる男のファッション講座
カジュアル編/ビジネススーツ編
第5章 第一印象というスキルを手に入れたあなたへ
目次はこうなっています。では、1章から順に見ていきましょうか。
1章は、平均(普通)を目指していたら、平均点(及第点)は取れませんよ、ということが書いてあるのですが、著者の説明の仕方が面白かったので、ピックアップ。
メンズファッションの世界を女性視点で表現すると、「良い」「ピンとこない」「悪い」の3段階になります。「普通」ではなく「ピンとこない」なのです。つまり、「普通」に相当する評価は足切りラインの対象になってしまうのです。なぜ、女性視点で考えるべきなのでしょうか?ファッションの世界においては、女性の視点こそがスタンダードだからです。
女性の視点がスタンダードと誰が決めたんだ!と「ターンAターン」を歌いたくなるのですが、それはまだいいとしても、女性視点だと、「良い」「ピンとこない」「悪い」の3段階って本当ですか!?ファッション関係の本には、自分の服装は印象に残らない程度に留め、自分のキャラを印象づけることが大切だ、という指南が多いのですが、今は服装もアピールしなければならない時代なのでしょうか。
第2章は、なぜモテない男は黒を好むのか、とキャッチーな章題がついていますが、モテない男が黒を好む傾向にある、ファッションビギナーほど黒に固執する、というような資料の提示はありません。リクルートやファッション誌を見ていればよくわかるのですが、最近は黒のスーツが年々勢力を増しているのですね。では、ファッションに興味のない男性(ファッションビギナーの男性)が増えたかと言えば、これが逆でして、増えております。だから、黒にモテるモテないはあまり関係ない気がするのですが、第2章では、そんな黒をまるでファッションビギナーの大敵のような感じで話を進めております。黒をテーマにしているファッション誌SENSEに喧嘩を売っているとしか思えません(笑)
①過去にファッションに興味を持っていた人たちが陥るこだわり
②ファッション知識に自信がない人が陥るこだわり
③服装に無頓着な人が陥るこだわり
変なこだわりがある男性に限って、黒を選んでしまう、というのは一理あると思います。無難、合わせやすい、着ている人が多い、という理由で黒を選んでいる人は確かに多そうですし。では、その黒が問題なのかというと、問題はそれよりも変な「こだわり」の方にあり、それがモテない原因になっているのではないか、というのが筆者の指摘です。だからといって、黒をここまでやり玉にあげなくても・・・。
第3章は「上品+遊び心ある」服装をコンセプトに、ファッション誌では教えてくれない「服を選ぶ3つの基準」が解説してあります。
・体のラインを表すシルエット
・カラーコーディネート
・ディテール
シルエットやカラーコーディネートについては、FINEBOYSやMen’s JOKERが、ディテールについては、Begin、LEON、MEN’S EXが嫌というほど教えてくれると思うのですが、本書でもこの3つにかなり力を入れています。ポイントを絞って書いてありますが、ファッションビギナーの教科書になるかと問われると、ファッションマニアの私には判断が難しいところです(ビギナー的視点で読めないので)。ただ、カラーコーディネートのところが、ちょっと適当すぎない?とは思います。
【カラーコーディネートのまとめ】
・ベースカラーとアクセントカラーの割合
・アクセントカラーは女性の真似をする
・素材によって同じ色でも見え方は変わる
章を割いて黒を否定しておきながら、カラーコーディネートの基準はこれだけ!?みたいな(笑)補色(効果的な差し色)、同系色配色(著者は地味と否定的だけど)、上濃下淡・上淡下濃くらいの解説もあって良さそうな気が・・・。
第4章はモテる男のファッション講座実践編です。ジャケパンスタイル中心に、春夏秋冬のトータルコーディネートが具体的に提案してあります。第3章とは違い、ジャケット、ニット、ジーンズ、ポロシャツと細かく言及しているのですが、とりあえず、靴の説明が一切ないとな!?と衝撃を受けました。アスコットタイが取り上げられていても、靴はスルー。基準がよくわかりません(笑)あと、シャツの言及も正確性に欠けると思いますね。
タックインという行為自体が、オシャレなイメージとはまったく無縁でした。しかし、2005年に、『電車男』というテレビドラマをきっかけにして、全国のアキバ系の人々がタックインを止めました。皆、シャツの裾を出すようになったのです。時代は変わりました。つまり、昔はシャツをタックインすることがアキバ系ファッションでしたが、今はシャツの裾を出していること自体が、アキバ系ファッションなのです。
な、なんだってー!(笑)タックインの是非はアキバ系うんぬんではなく、シャツの裾の形(ラウンドテイルかスクエアテイルか)や着丈の長さで決まるものです。今のシャツは着丈が短めなので、裾を出しても野暮ったくならず、コンパクトにまとまるはず。昔の着丈が長く、身幅が大きいタイプのシャツをタックインしないのが野暮ったいだけです。著者はベルトをアクセサリーと考えていて、それを見せることにこだわっているので、タックインを推奨しているのだと思いますが、私自身は、そこまでして、ベルトを見せる必要なんてないのでは?と考えております。
第5章はおまけです。イノベーター理論、黒の使い方、試着の大切さについて、軽く言及しているくらい。
以上、第5章まで順にツッコミを入れながら見てきましたが、他にもツッコミを入れたいところが多々あります。何より、この本の対象年齢が書いていないのが、なんともお粗末なのですが(ビギナーこそ年相応不相応のファッションやデザインを知りたいと思う)、おそらく、
20代後半から30代後半くらいじゃないかなぁと思います。お世辞にもスタイルがいいとは言えない、著者自身が自らモデルをやっていて、着こなし例(体型カバーのお手本)を提示しているのは素晴らしく、「上品+遊び心ある」服装という切り口も面白いとは思うのですが、もう少し、完成度が高ければなぁ、というのが正直な感想です。せめて、第3章、第4章を中心に、丁寧に体系的に書いてあれば良かったのですが、
第1章に「モテ/非モテの超格差社会」とあるように、ファッションを頑張ろう、モテよう、褒められよう、とファッション熱を煽るようなスタンスで書かれているので、ファッション自己啓発本の域は出ないかなと。脱オタの参考にはあまりならないでしょう。

コメント
コメント一覧 (12件)
この人のブログ等見ましたがチャラいの
一言しか出ませんでした・・・・
別のコメント欄でゲイナーみたいって
書きましたがやっぱりそう思いますよね?
悪い意味で。
個人的にはゲイナー好きで読んでますが
(買わないけど)
大雑把に言うとあの系統からちゃらい+安っぽいを
抜けば良いと思うんですけど・・・・
ゲイナーとメンズクラブの間みたいなイメージです。
因みにこの著者と同い年&同郷でした・・・・・・・・・・・・・
少なくともdaleさんの書評だけから判断すると、さんざんネット上や世間で語りつくされた内容のようですし…今更取り沙汰されるレベルではないように思えました^^;
右も左もわからない人にBeginばりに蘊蓄を押しつけても混乱するでしょうし、広く浅く、という方が入門書には向くのでしょうか
スイマセン、「ターンAターン」にピンと来ちゃいました(笑)
小ネタの使い方のセンスに脱帽です。
daleさんが、ここまで酷評するのは珍しい。
よほど腹に据えかねたと思います。
3章の内容が薄いのは、それこそが彼のビジネスだからじゃないでしょうか?
宣伝本として考えれば頷けます。だとしたら、したたかな人ですね。
「ターンAターン」・・・コーヒーふきました(笑)
ヒデキ、カンゲキ!
[昔はシャツをタックインすることがアキバ系ファッションでしたが、今はシャツの裾を出していること自体が、アキバ系ファッションなのです。]
私も極論するのはおかしいと思います。
daleさんの仰るように服のケースバイケースだと思います、トラッドの着こなしとかならやりやすいと思いますけど。
若い人が私服でガイナーやメンズクラブのような服装でタックインするのは一般的にむしろキケンな気がしますけど。
テレビ番組の評論家みたいな方のファッションやパーソナルスタイリストのサイトで見かけます。
「ファッションの世界においては、女性の視点こそがスタンダードだからです。 」
ターンAターン、聴いてみました、ツッコミ、面白かったです、笑。
彼はある意味、ファッションの歴史を書き直しましたね、かなり強引に。
女性にモテたい目的だけにコーディネートをするならそれは女性がスタンダードになるでしょうけどね・・・それに女性にも色々いますけど。
長々と失礼しました。
「カワイイ」には≒幼稚という性質とも重なっているかもしれませんが、私は、「カワイイ≒cute」だと思っていたので、幼稚だけで断じると、ちょっと違和感がありますね・・・。
海外でも、cuteというと普通に、かっこいい男、いい男という意味の褒め言葉で通用していますし。
モテを語るには厳しい方ですね・・・・
視野も知識も狭いと感じます・・・
そのへん歩いてる大学生でももう少しまともな本が書けそうですね。
「パーソナルスタイリスト」を名乗る人たちはどうもファッションの知識やセンスに欠ける気がします。
>tさんへ
遊び心とちゃらいは紙一重なので、その難しいバランスをあえて狙わなくてもいいんじゃないかなぁ、と僕は思いました^^;
>ひろゆきさんへ
当たり障りのない内容に著者のセンスを若干加えたものを、スキルとか教養とか言っているのに違和感がありました^^;
>ゴリさんへ
僕はターンAが大好きでして(笑)
>UGさんへ
オフェンシブな内容(尖った論・価値観押し付け)で突っ込みどころが多いのは仕方がないと思うのですが、当たり障りのない感じでまとめているのに、脇が甘いとそこをつつきたくなってしまいます。
ほら、僕は性悪ですし(笑)
>ヒデキさんへ
宣伝本ですか、なるほど^^;
>週刊コーディネートさんへ
ハウツー本なので極論で押し付けるのもいいとは思いますが、その理由がなんだかなぁという感じです。わざわざアキバ系を引き合いに出さなくてもいいのにな、と。
>love_chocolateさんへ
「cute」になくて「かわいい」が持っているものが「いとおしさを起こさせる」という要素かなと。
つまり「幼稚」と「弱弱しさ」ではないか、と僕は考えています。
だから、男性の「上品+遊び心」を見て、いい男、かっこいい男と女性が感じるのは理解できます。
cuteはポップさと力強さを感じる言葉なので。
でも、男性の「上品+遊び心」を見て、いとおしさを起こさせる、
と言われるとちょっと疑問なんですね。
「かわいい」については、
http://taf5686.269g.net/article/3693885.html
で一度、考えてみたことがあるので、よろしければ読んでみて下さい。
>mihoさんへ
モテと教養という相反しそうなテーマで書かれているのが、無理があったのかなぁと。
>平安さんへ
主張の多くが論拠か根拠が抜けているので、そこを書けば有意義な本になるのではないかと思います。1000人分のノウハウがあるわけですし。
『ファッションスキルはオトナの「教養」』について
先日提起した森井良行さんの著書。
こちらを読んで、他のブロガーさんも感想を書いています。
Elastic 書評『ファッションスキルは大人の「教養」』
Euphoria 久々に本を読んだ
いやいや、もうお二人…
俺はこの管理人好きだぞ。
このまま自分らしく行ってください