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着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS 金谷仁美 青幻舎 2008-11-15 |
本書『着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS』はファッション誌『流行通信』に1999年4月から2006年8月まで連載された「着倒れ方丈記」を1冊にまとめたものです。ファッションオタク、ファッションマニア、服オタ、かっこよく言うと、ファッションヴィクティムと呼ばれる服道楽たちの、ライフスタイル、部屋、コレクションが多数収録されています。著者は都築響一氏。ブランドは、エルメス、シャネル、グッチといったスーパーブランドからコムデギャルソン、ヨウジヤマモト、アレキサンダーマックイーン、マルタンマルジェラ、Nハリウッド、ナンバーナイン、エックスガール、ヘッドポーター、サイラス、ナイキ等々、ドメブラ、モード、ストリート問わず、
幅広く登場。

本書が面白いのは、ファッション誌に出てくるようなモデルやセレブではなく、あくまで普通の人が高い洋服を買いまくっている点にあるのですが、それは著者が意図して、そういうファッションエンゲル係数の高い人を選んでいるからです。
『着倒れ方丈記』に登場するのは、洋服が大好きでしょうがない人たち、それもいろんな洋服じゃなくて、どれか1つのブランドをずっと追いかけて集めている人たち、しかもお金持ちじゃなくて狭い部屋で自活している人たちだ。お金持ちじゃなくて、むしろ貧乏に近い人たち、広い家じゃなくて狭い部屋に限っているのは、お金があって買い集めているんじゃ人生をかけていることにならないし、広い部屋じゃ収納がたくさんあって、どんな生活をしているのかわからない。狭い部屋だったらどんなものを着て、どんな物を食べて、どんな本を読んで音楽を聴いているのか、そういう日常が隠しようもなく露出してくるからだ。
その人物、部屋、コレクションが1枚の写真に収められているのですが、著者の狙い通り、写真からいろんな情報が読み取れます。その人の生活を覗き見るのもいいですし、そのブランド支持者の価値観を知るのもいいですし、そのコレクションの量と美しさに圧倒されるのもいいですし。一歩引いて見て、その人のライフスタイルとブランドの世界観が混ざったカオスな雰囲気を楽しむのもそれはそれでいいと思います(笑)
個人的には、服オタたちの価値観が興味深かったのですが、中でも名言(迷言?)と思ったのがこの3つ。
「(ギャルソンとマルジェラを)一緒にクローゼットに入れるのは失礼」
仏壇と神棚を同じ部屋に置くのはよくないと言われますが、ギャルソンとマルジェラも喧嘩するのでしょうか?(笑)もはや、デザイナーやそのクリエーションに対する敬意は「服」という次元を超えているのですが、この感覚は服オタでなければ理解できないでしょう。きっと。
「(ギャルソンが好きな理由は)タグと、川久保玲の髪型かな・・・」
これは深い言葉ですよ。だって、タグと川久保玲の髪型が並列なんですよ?(笑)残念ながら私はギャルソンファンではないので、何を言っているのか意味がわかりませんが、何か関連性やドラマがあるのなら誰か教えてください。お願いします。
「服が入りきらないので、家を買おうかと相談している」
家族が増え手狭になってきたので引越しよう、ということでしょうか。簡単に家族を捨てれないように、服を捨てるという選択肢がそもそもないのでしょうね。服へのただならぬ愛を感じました(笑)
他に特筆しておく点として、本書はファッションを趣味にするのはどういうことか。それを考えさせられる1冊でもあります。
「ヨーロッパでは、高級ブランドはそれを買う階級の人たちがちゃんといて、若い子がへんに高いものを身につけたりはしないのです」なんて、したり顔で解説する人がこの国にはたくさんいる。そういう人たちがおそらくもっともバカにする、「そんな階級でも暮しでもないのに、高い洋服を買いまくる日本人」たちの集合体がこの本ということになる。
ファッション好きなら、一度は、「分不相応」「中身に自信が無い人ほど服にお金をかけたがる」「うんちく野郎」「本当にオシャレな人はブランドにこだわらない」「安い服をうまく着こなすことこそオシャレ」と言われたり、もしくは、そのような文章を読んだ経験があると思います。「ファッションって何なの!勝ち負けなの!?」と悩んでいる人も中にはいるでしょう。でも大丈夫です。本書に登場する人たちを見れば、そんなのはどうでもよくなってくると思います(笑)分不相応?身分を超えた恋愛話があるのなら、身分を超えてブランドに恋い焦がれてもいいじゃないですか。中身に自信が無い人ほど服にお金をかける?そういう傾向にあったとしても、なぜ服が趣味の人だけ、その情熱をバカにされないといけないのでしょう。うんちく野郎?あれはうんちくではなくノロケと思っていただければ幸いです(笑)本当にオシャレな人はブランドにこだわらない?オシャレな人とオシャレが好きな人は違います。料理が上手な人とグルメ(食べるのが好き)な人が違うようなものです。好きなものが偏っていて何が悪いと言うのです。安い服をうまく着こなすことこそオシャレ?ファッション好きは一般的なオシャレ(マジョリティ)を目指さないといけない、と誰が決めたのですか。あなたとは違うんです!(主に価値観が)
オシャレ(勝ち負け)、分相応不相応、コンプレックスの有無。そういう他者からの評価を必要以上に気にするより、その服が好き。そのブランドが好き。そのデザイナーが好き。コーディネートを考えるのが好き。ファッション好きにとって大切なのは、自分がそれを楽しんでいるかどうかではないでしょうか。
売る側にちっとも大切にされないまま、一方的に愛するブランドのために生活を捧げつづける着倒れ君たち。彼ら幸せな犠牲者から受ける、理屈を超えたポジティブなパワーが何より眩しく、いとおしい。
著者が述べるように、本書は理屈を超えたポジティブなパワーで溢れているのですが、それは登場する人たちが、皆、ファッションを楽しんでいるからです。雑念にとらわれずのめりこんでいるからです。その熱い情熱がポジティブなパワーを生み出しているのです。それに気付いてほしいと思うのです。だからあえて言います。服オタでもいいじゃない!

コメント
コメント一覧 (36件)
面白そうですねこれは。
Beacon Fireというスケの雑誌で、この企画は連載当初からブランド側に「訴えるぞ」などと警告されていたそうですが大丈夫でしょうか笑
>>身分を超えてブランドに恋い焦がれてもいいじゃないですか。
最高の一言です!
ぼくはまだまだ恥ずかしい半端者ですが、
でもやっぱり楽しく、服を、着ていたいです。
個人的には、
二人目のマルジェラVICTIMSであるマルジェラ先生。
彼のライフスタイルが凄すぎると思いました笑。
うんちくではなくノロケ…ちょっと眼から鱗です
もともと生活を切りつめてまで服を買う方ではありませんが、たまに給料の大半をつぎ込みたくなる衝動にも駆られます…笑
彼らほどであれば、「ブランド志向」も立派なポリシーと言えそうです
単行本化してたんですね!!
この連載が面白くて流行通信をバックナンバーまで探して、この連載終了とともに流行通信に興味がなくなりました。
>分不相応?
あたりからの下りが最高にいかしてます!
ファッションがオシャレでもモテでも道楽でもなく、”趣味”となったとき、全ての理屈とバランスは霧消するのです!
改めてブランドと言うものは一種の宗教じみたものなのかなぁと認識いたしました。(笑
能書きなんてくだらねえぜ、俺の服を見ろ!
本人が幸せならいいじゃない。
そこまで言ってくれて
ありがとう!daleさん!
なぜか慰められた気がしてなりません笑
なぜかわからないですが、感動しました!
何かを本気で身も世もなく愛したことのある人は、他人のみっともなさも許せるようになると思うのです。
みっともないものを限りなく憎むのがファッション好きだとばかり思っていましたが、こんな愛すべき人々(daleさん含む)もいたのですね。
熱い感想に大満足です!こんな感想が聞きたかった
恐縮ですがコメントさせて頂きます。
「分不相応?身分を超えた恋愛話があるのなら、身分を超えてブランドに恋い焦がれてもいいじゃないですか」
この言葉に感銘を受けました。これは格言ですね。daleさんの服に対する情熱が伝わって来ました。陰ながら応援してます。
うーん、感動した!そうそう、まさにそうなんですよね。理屈じゃないんです!好きなものは好き、服が趣味と胸を張って言おうという自信がつきました。実はもう買ったらやばい状態ながらも、昨日ふらっとショップに寄ったらまさにドンピシャ好みの物との遭遇が待ち受けていまして、結局購入。うれしいながらも、なぜやめられないのかと少しモヤモヤ気分であったのですが、一気にすっきり!私はギャルソン好きなので、タグと川久保さんの髪型のくだり、何となくわかります!
目から鱗でした。
出発点が「モテたい」だった私も人からどう見られるか、最近では特に2チャンネラ的な人々からの目を気にしていました。
だって好きなんだもん
の一言で済ましてもいいんですよね。
毎日閲覧していましたが初めて書き込んでみました。
私もいろいろと言われた経験があるので感銘を受けました!そうなんです!やめられないんです!好きなんですから!
自己満足なんだからいいじゃないか!
オレの美学に口出すな!
て感じですね。笑
daleさんのような考えが出来てこそ、本当に服を愛すことが出来るんですね!
訴えられるんですか?w
ヴィクティムに憧れるようなそうなりたくないような・・・複雑ですw
これは服オタにはたまらないですね。笑
これからも身分違いの恋を続けたいです♪
凄いの一言です!
私も一度でいいから着倒れしてみたい!
コメント欄を見ていかに服オタが日頃迫害されているのかがわかりました。
承認された服オタの感情の発露は見ていてちょっと怖いです。
好きなものに向かう人の横顔は素敵に見えると思います,それが服でなくとも。
そういう人たちを冷ややかに見ている人とは一生分かり合えない気がする。
う~ん、服にお金を注ぎ込み過ぎて人付き合いが少々減った気がしたけど…
まあいっか、と思えるようになりました。
自己満足って大事ですよね
服オタさんが理解されるされないは今回の服オタさん個人の思いようで変わるのであって
好きならとことん進めばいいのですが
服オタさんが嫌われてしまう理由って結局内面的なもんなんじゃないのかな…
服オタさん全てがとはいえないし
私の主観的な問題だから
そんな人が多い気がするに留めるけれど。
服オタってそういうマイナスな面への批判も含めた言葉ですよね?
外面だけではダメだよっていう服オタでない人からの
その内面への批判は受け止めるべきでなかろうかと思うのです。
オタクパワーの再認識ですかね。
ファッションの到達点って境界線を超えた究極の個性に在ると思うのだけれど?
あなたは限られたブランドが好きでアイテムなんか見てないのね…
残念です。
本当は服が好きでないデザイナーもいるんじゃないかと。
もはや個性
elasticさんで、以前このブログでも話題にしたことがある
「HAPPY VICTIMS 着倒れ方丈記 」が取り上げられていました。
elasticさんへのリンクはこちら↓
http://taf5686.269g.net/article/13922650.html
このブログの過去の記事へのリンクはこちら↓
http://blogs.yahoo.co.jp/margielamarni/28714979.html
以下、elasticさんからの引用です。
——-…
前から拝見していたのですが、初めてコメントします…。すいません。
今回の記事で、古本が好きな、古典の教授を思い出しました。高価な稀少本をFAXで注文するとき、毎回、紙が降りていくのを嬉しさと恐怖で見つめているそうです(笑)。
確か、山本耀司さんが「服を買うことは一つのエンターテイメントでなくてはいけない。」と仰っていましたが、好きな物を買うときというのはある意味でスリルであり、個人的な楽しみであっていいのでは…と私も思います。
この本に挙げられた方は皆、人と同じ物が欲しくてブランド品を買っている訳ではないと思うし、誰かに迷惑をかけてはいないので、ある意味潔いというか、共感するものが有ります。
…といっても私は中途半端に色々なブランドを見るの好きなんですが。困ったものです。
凄くおもしろくって、立ち読みで終わらせるつもりが買ってしまいました。
ミスハリの店員の、『家賃払う位なら服買います』のゴミ発言には引きましたが・・
凄くおもしろくって、立ち読みで終わらせるつもりが買ってしまいました。
ミスハリの店員の『家賃払う位なら服買います』というゴミ発言には引きましたが・・
オタって結局趣味の世界ですから、服オタでもいいと思いますよ。
ただ、オタはオタと話すのが楽しいのではないかな。一般人には理解できない部分があると思うので。
2コ上↑の方
なぜゴミ発言?
別に滞納してるわけじゃなくて実家暮らしだからだと思うんですが…。
服買いたいから実家出ないって人けっこういましたよね、あの本
早速購入して読みました。結局何が好きか、その力点が違うだけなんですよね。
未来はあるのだろうか。
なるほど・・( ー`дー´)キリッ
いままで「高い服は身分の高い人のためのもの」「身分不相応な服はかっこ悪い」と思っていました。
…でも身分不相応な「恋」をしたっていいですよね。
かっこいい、なんか感動しました。