MENU

紳士靴選びの傑作本『紳士靴を嗜む』

紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで 紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで
飯野 高広

朝日新聞出版 2010-06-18
売り上げランキング : 4756

Amazonで詳しく見る by G-Tools




 オールアバウトで紳士靴に関する記事を執筆されている飯野高広氏。
その記事はネットで読める靴コラムの中でもトップレベルの
クオリティーだと思うのですが、その氏の本なので駄本になるわけがなく、
期待を裏切らない素晴らしい本だと思いました。スーツ選びの傑作本が
落合氏の『[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで』なら、本書『紳士靴を嗜む はじめの一歩から極めるまで』は
紳士靴選びの傑作本と言える出来ではないでしょうか。
靴好きから初心者まで是非読んで欲しい一冊です。


 内容は、靴ムックの巻末や雑誌でちょろっと言及される、
靴の種類、製法、意匠、メンテナンス、フィッティング等が中心。
雑誌でよく取りあげられる、各ブランド、モデルの特徴、
歴史などはほとんど取り上げられておりません。あくまで、
靴を嗜む際に必要な基礎的な知識と、そこから一歩踏み込んだ
うんちくで占められております。そこが靴本として真摯です。



健康に留意して履く=靴を買う前に知っておきたい知識

品位を持って履く=靴を買う時に活用したい知識

大切に扱って履く=靴を買った後に役立たせたい知識


この3点を主軸に足の構造から近年の紳士靴の動向まで12の項目で
丁寧に説明されております。





<目次>


第1部 健康に履きこなしたい人のために


1 まずは自分の「足元」を見つめよう!

2 「部品」を知れば、靴の役割も見えてくる!

3 弁慶でなくても、「泣き所」は大抵ある!

4 「数字」を信じすぎるのは、大失敗のもと!


第2部 カッコ良く履きこなしたい人のために


5 なんだかんだ言っても、「紳士靴の主役」は絶対これです!

6 「脇役」にも良い役者を揃えたい!

7 「作りかた」次第で、見栄えも履き心地も激変します!

8 「素材」の違いが、靴の違いにもつながります!

9 「産地」で味が違うのはお酒と一緒です!


第3部 大切に履きこなしたい人のために


10 良い靴は新品の時より、育ちます!

11 緊急手当ては、早めが肝心です!

12 次の一歩は、はたしてどうなる?



 ほとんど基本的なことですけど、一歩踏み込んで書いて
あるのが本書のいいところです。例えば「靴は夕方に買え」み
たいな有名な鉄則がありますけど、本書ではこんな感じで
説明しています。



「体の一番下」にある足部のむくみは、重力の関係で足に水分や
老廃物が溜まりがちな夕方に起こるのが一般的なようです。
それが昔から「靴は夕方に買え」と言われるゆえんです。


足がむくんでサイズ感が変わるから夕方に買うわけですが、
そのむくむ理由まで説明しています。さらに。



ところが困ったことに、これは必ずしも全ての人に
当てはまるとは限らないのです。例えば早朝に
足が冷たくなって目が覚めてしまう冷え性な方は、
足が一番むくむのはその「朝」のはずですから、
「自分自身の場合」を改めて客観的に認識しておきましょう


と注意書きまで。「靴は夕方に買え!」で終わる雑誌が多い中、
この説明は丁寧ですよね。


 フィッティングに関しても細かいですよ。



・捨て寸は親指から10~20ミリ程度確保

・紐靴の場合、最も踝よりのハト目が左右方向で5~10ミリ程度開いている

・踵は5ミリ程度の余裕


靴好きにとっては常識ですが、『男の服装術』のゴージラインの話を
思い出しましたよ。ゴージラインのスタート地点は首筋から8~9センチ、
ゴージラインと下衿の角度は50度が美しいというアレです(笑)
もちろん、本書もイラスト付きでフィッティングポイントが説明され、
サイズが合っていないとどうなるかまで書いてあります。
あと、アメリカとイギリス靴ではハーフサイズずれるのですが、
なぜずれるのか疑問に思ったことはありませんか?
その「靴のサイズ表記」についてのうんちくまで載っております。



 第2部の靴の素材、製法、革について、第3部のメンテナンスについては
本書より秀逸な本がたくさんあります。特に本書はカラーではないのが残念ですが、
体型的にきれいにまとまっており、うんちくと愛がたくさんつまっております。
例えば。ストレートチップ、Uチップ、プレーン、モンクなどなど。
その格式の高さの順番を述べれても、その理由まで説明できる人は少ないでしょう。
本書ではその起源から説明しております。



ルーツは1815年に起きたワーテルローの戦いで、ブリュッヒャーと
いう名のプロシアの陸軍元帥が作られた戦闘用ブーツです。
羽の形状が競馬のゲートに似ているため、イギリス・フランスなどの
ヨーロッパ諸国ではダービーとかデルビィと呼ばれ、
アメリカでは考案者の苗字を英語読みし、ブルーチャーと呼ばれます。


これは外羽根式についての説明です。軍服由来で機能性重視。
一方、内羽根式はヴィクトリア女王の夫が考案したミドル
ブーツに起源があり、見た目が清楚という特徴があります。
その起源から「外羽根式=カジュアル、内羽根式=フォーマル」
という区分けがあるようです。



 ブランドの紹介も一応あります。各ブランドの歴史やラストについて
の詳しい言及はありませんが、短いながらもその記述は的確です。



イギリス靴好きの、かつての最終目標。1999年にイタリアの
プラダが買収して以降、逆にそれ以前に製造された木型や
モデルに人気が偏る状態が続いています。


これはチャーチです。「旧チャーチは最高」ときちんと触れているのがえらいですよね(笑)ブランド側としては現行モノを売りたいので、こういうのってなかなか書けないと思います。




普遍的なデザインと「木型」の大切さを改めて教えてくれた、
1980年代の末期以降のイギリス靴信仰のメッカ的存在です。
足当たりの柔らかさも特徴です。


こちらはエドワードグリーン。「雑誌のグリーンプッシュは宗教的な気持ち悪さがありますよね(もっと他にもいろいろあるのにナ)」とdisっているようにも受け取れますが、真相はわかりません(笑)




かつては普遍的な造形と豊富なウィズ展開がポリシーだった、
中部リモージュが拠点のメーカーです。近年の若返り化は
はたして・・・。 


これはJMウエストン。私はミッシェル・ペリーのデザインが好きなので、「はたして・・・」が気になるのですが、こんな感じで、
客観的なブランド情報と筆者による評が述べられているので、
カタログ的な雑誌やムックとはひと味違います。




 とりあえず、本書で読んで欲しい箇所は1部に集中しているので、
立ち読みをするならそこを読んでみるといいと思います。
個人的には、コンパクトかつ必要な知識が体型的にきれいに
まとまっているので、購入してもいい本だと思いますけどね。
最高級靴読本 Vol.3
』とセットでオススメしておきます。





よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (6件)

  • ああ、この本は既に買って読んでいる最中です。なかなか良く書けていていいですね。

  • 旧チャーチって評価高かったのか・・・
    道理で歩きやすかったはずだ
    前にオクで売っちゃいましたけど(笑)

  • 思うにdaleさんが本を書いてみてはいかがでしょう?
    daleさんほど造詣が深い人もそういないのでは?

  • >masatoさんへ
    僕もこの本は非常に勉強になりましたよ。
    >スネークさんへ
    もったいない!
    >japonskyさんへ
    いやいやいや。
    僕なんて浅学非才なので^^;

  • いい本ですね。
    女性向けでもこんな本あるといいなぁと思います。
    男性のファッションはうんちくが多くてうらやましいです。

コメントする

目次