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映画を観る前に読んでおきたい『イヴ・サンローランへの手紙』

イヴ・サンローランへの手紙 イヴ・サンローランへの手紙
ピエール ベルジェ Pierre Berg´e

中央公論新社 2011-03
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映画『イヴ・サンローラン』
が公開中です。関西は5/7(土)が
公開初日で私は10時スタートの分を観てきました。
席は半分くらいしか埋まっておらず若い層がほとんどいません。
イヴ・サンローランと同じ時代を生きたであろう年輩や団塊世代の方が
多かったように思いますが、このことを友人に話すと
「(YSLは)靴下とタオル・ハンカチのイメージしかないからじゃない?」と言われ、
ファッション好きと一般人の間の温度差を強く感じました(笑)



 靴下とタオルはいわゆるライセンスですが、一般的にイヴ・サンローランと
言えば「モードの帝王」であり、「トラペーズライン」「モンドリアンルック」
「サファリルック」など数々のスタイルを世に打ち出したことで知られています。
多くのデザイナーに影響を与えた素晴らしいデザイナーなのは
言うまでもないことですが、そのサンローランのどこが偉大かというと、
次の3つの功績に集約されるのではないでしょうか。


1.オートクチュール(ファッション)を芸術の領域に引き上げた

2.オートクチュールのデザイナーで最初にプレタポルテを手掛けた

3.女性に権力を与えた


1と2は映画で詳しく語られるので省きますが、3については
本書『イヴサンローランへの手紙』でピエール・ベルジェ
(公私ともにサンローランのパートナー)がシャネルを
引き合いに出し力説しております。



「シャネルが女性に性を与えたのであれば、君は女性に権力を与えたのだ。
権力が男性に所有されていたことを君はよくわかっていた。
そして、女性の肩に男性の服を置くことによって、
君は女性に権力を与えた。それを君はしたのだ。
スモーキング、サファリルック、パンタロンスーツ、
ピーコート、トレンチコートがそのことを証明している。
両性的な面はまったくない。女性は女性らしさを増し、
官能的なときめきを放つのだ。」


サンローランの生涯は20世紀後半のモードの歴史そのものです。
ファッションを芸術の領域に引き上げ、お金持ちの女性に
服を着せるだけでは退屈だとプレタポルテを普及させ
(特権階級のためのクチュールをしているバレンシアガとは逆)、
そして最後は商業主義の波に飲み込まれていく。サンローラン最後の25年間は孤独とドラッグ・アルコールとの戦いで、ベルジェ曰く、



「彼は一年に2度、コレクションの最後に割れるような拍手を浴びる際のみ、
わずかに笑顔になるのだった」

「君のクチュール・メゾンは君の最後の救命ブイだったのだ。
だから、それを失ってから君は誰に、何にしがみついたら
いいのかわからなくなっていた」

「実際、こうした暗い時代から君はついに回復しなかったし、
君を毎日見ていた人々は、君が自分を「生きた屍」と形容することが間違っていないとわかっていた」


と壮絶なものだったようです。


 映画ではそのサンローランの栄光と苦悩の日々をドキュメンタリー形式で(映像の約9割が初公開)、
本書『イヴ・サンローランへの手紙』ではサンローランを支えた
ベルジェが日記形式でサンローランの素顔を語ります。
どちらも2人の人生の総括的な内容で違いは映像があるかないかくらいですが、
理知的な語り口で穏やかに語る映画とは違い、本には生々しい
ベルジェの声も記されており心が揺さぶられます。



もし、こうしたすべての人たち、ジャーナリストやその他の人たちが、
私たちの本当の原動力だったのは性であり、アートではなかったと知っていたとしたら!
性のために、そしてまた私が君を飛びこませ、押し付けた性の探検のために、
全てが存在したのだということを。私たちの愛、
私たちのクチュール・メゾン、私たちの収集品、私たちの人生が!


 現在のモードの礎を築き上げたと言っても過言ではないサンローラン。
その創造の源はどこにあったのか。本書と映画を見ればきっと皆さんにも
わかると思いますので、ファッション好きならおさえておきたい作品です。
先に本を読んである程度背景を知ってから映画を見ると、
より感慨深いと思いますよ。





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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 映画を観てベルジェの政治手腕に脱帽した。
    レジオンドヌール勲章と彼のロビー活動は、まったくの無関係ではないだろう、とか。
    『イヴ・サンローランへの手紙』も読みたくなりました。

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