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成功する男のファッションの秘訣60――9割の人が間違ったスーツを着ている (講談社の実用BOOK) 宮崎 俊一 講談社 2011-12-16 |
2着で29,800円のオリジナルスーツ。品質は市場価格で1着8万円台
クラスの品質があると述べる、松屋銀座の「銀座の男」市の仕掛け人が記したスーツ指南本が『成功する男のファッションの秘訣60』です。
スーツの指南本はたいてい昔話(アイビーやバブルの話)、
他国の話(イギリスやイタリアの文化)、著名人の逸話(ウィンザー公、アステア、モーム等)、
服飾史の話(ブランメルやジェントルマン思想)、昨今のトレンドの話(ピッティやサヴィルロウ)、
著者の自分語りと話が脱線していきます。「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
俺はスーツの指南本を読んでいたらいつのまにかスーツに関する薀蓄を読んでいた」となりがちです(笑)
その点、本書はスーツ読本ではなくハウツーに特化しており無駄がありません。
本を手に取ってみると良くも悪くも薄いなぁと思いましたが、
内容の方もスーツ選びに必要なメソッドをわずか60ポイントにまとめており、
そのコンパクトさが本書最大の特徴です。
<目次>
第1章 これだけ読めば、あなたも明日からスーツ通
第2章 よい服を見極めるにはコツがある
第3章 これさえあれば・・・・・ワードローブの基本を押さえる
第4章 スーツは着こなしてこそ、個性が発揮される
第5章 スーパークールビズが日本のドレスコードを破壊する?
第6章 いいものを適正価格で買ったら、長く使おう
「成功する男のファッション」というタイトルはありがちで、
「9割の人が間違ったスーツを着ている」という煽りまで入っているので内容はあまり期待していなかったのですが、
バイヤーならではの視点も非常に説得力があり参考になりました。
「成功する男の~」とタイトルにつく本でありがちな「色彩心理学」「エゴグラム」「TPO別スタイル」のような印象操作の話は一切出てこず、ひたすらスーツ選びに必要なポイントが淡々と解説されていく感じです。
指南としては他のスーツ読本と比べても王道で間違いのない感じですが、
他の指南本と違うなと感じたのは次の3つです。
■METHOD10 プロが選ぶのはイギリス製の生地
パーティーなどで着る特別なスーツは別として、
日常のスーツをワークウェアと捉えるならば、選択の基準として
「耐久性」はかなり重要な要素です。そういう意味で私がおすすめする
「5年着られるスーツ」の前提は、イギリス製の生地を使っていること。
<中略>一般論として、イギリス製生地の方がイタリア製のと比べ、
長持ちします。しかも型崩れしにくい。<中略>
イギリス製の生地は「経・緯双糸」で織られています。
イタリア製の生地のほとんどは単糸と双糸の交織。
これは見た目とソフトな風合いを重視しているからで、
ここに耐久性の差が出るのです。
スーツ読本やファッション誌だとイタリア製を推している
ことが多いですよね。「この柔らかい生地が体に吸い付く~」
「生地が軽く何も着ていないような~」みたいな感じで。
しかし、それは書き手が高級なスーツを着ていることがほとんどであり、
安い仕立てではイタリア製生地の良さを生かし切れないことがほとんど。
その点、イギリス製のハリのある生地ならそこそこの値段でも仕立て映えがするのと耐久性もあるのでそちらを選んだ方が合理的というのが著者の意見なのかなと。
あまりいないかと思いますが、イタリア製生地のスーツで自転車に
乗ろうものならすぐ生地が擦り切れてスラックスに穴が空きますよね。
そういう人はイギリス製の生地を検討してみては。
■METHOD18 プロが教えるシャツの見方「シャツは脇の縫い方を見る」
「シングルニードル」と呼ばれる工程があります。
「巻き伏せ本縫い」ともいいますが、シャツの脇の縫い方を見れば、
そうであるか否かがすぐわかります。
巻き伏せ本縫いの工程は、「シャツは肌着である」という
ヨーロッパの文化から生まれたもの。彼らにとってシャツは
肌に直接身につけるものですから、この始末がうまくされていないと、
一日中縫い目が肌にこすれて不快なんです。
「スーツ選びはシャツ選びから」と著者は考えているようで、
シャツの選び方に関して細かい指南をしております。
詳しくは本誌で確認してほしいのですが、「巻き伏せ本縫い」や
「巻き伏せ二本針縫い」を写真付きで解説している指南本はなかったと
記憶しております。
ちなみに一般的な指南本だと生地と仕立ての良さでシャツを
選ぼうとざっくり説明しております。親切な指南で生地の番手と運針数、
具体的には80番手以上で1㎝あたり7ステッチ以上かをチェック
しましょうと書いてあるくらいです。
■METHOD27 私が紺無地を勧めない理由
それにもう一つ問題なのは、「紺無地には値段が反映されやすい」ということ。
たとえば「紺無地のスーツに白いシャツ、紺無地のネクタイなら無難」と
いう考え方もありますが、「細かい理由はうまく言えないけど、
なんかちよっと変だな~」と思うとき、原因の大部分は素材感にあります。
<中略>だから、コストパフォーマンスや着映えを考えても、
「そこそこの価格のスーツ」に紺無地を選ぶのは、損なんです。
これは私個人の意見ではなく、多くのプロの一致した意見です。
<中略>ですから、スーツを3着とするなら紺無地を選択肢に入れる
必要はありません。
紺は夜の色、グレーは昼の色という欧米の認識の話かな?
と思っていたら違いました。紺に白シャツだとコントラストが
きつくなるのと、紺は濃紺から赤みを帯びた茄子紺まで色味に
幅があるのでVゾーンの組み合わせが難しく、
さらに生地の値段が反映されやすいという難点もあるようです。
言われてみれば、お店の照明で紺の色味がわかりにくくなっていたり、
スーツを誂える場合も生地見本帳の小さな生地からどんな色目に
仕上がるかを予測するのは難しいですよね。
コストパフォーマンスや着映えを考えるとスーツ初心者は
紺無地に手を出さない方が賢明なのかもしれません。
この3つのメソッドだけでもそれなりに著者の狙いが見えるかと
思いますが、「今以上にスーツを楽しもう」という
マニア向けたスーツ読本ではなく、「賢いスーツ選び方」と
いう感じの内容です。スーツにあまりお金をかけたくない方や
スーツ初心者が読むと特に参考になるかと思います。

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