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紳士服の歴史は軍服の歴史である『軍服の歴史5000年』

【図説】軍服の歴史5000年 【図説】軍服の歴史5000年

辻元 よしふみ 辻元 玲子

彩流社 2012-01-25
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 西洋の紳士服の歴史は軍服の歴史でもあります。古代ローマ時代、
ペルシアに攻め込まれ長ズボンとジャケットがもたらされ、
中世ではオスマントルコの軍勢と共にボタン文化もやってきて、
近世ではナポレオンが負けたことでロンドンのファッションが
プロシャ寄りのシックなスタイルへと大きく傾き
今のスーツスタイルが完成されました。


 そんな大昔の話ではなくても、第一次世界大戦が時計を普及させたという
話はあまりにも有名で、軍服と共に男性の服装も変化していったわけですが、
その過程を時系列順に丁寧に追っているのが本書『軍服の歴史5,000年』です。



 著者は日刊ゲンダイで「おしゃれウンチク堂」を連載している服飾評論家の辻本よしふみ氏。
前著『スーツ=軍服!?―スーツ・ファッションはミリタリー・ファッションの末裔だった!!』を
膨らませたような内容ですが、テキストの量が増えイラストも200点以上という
すごいボリュームです。




 ミリタリー系のウンチクはファッション誌でもよく取り上げられるので
ご存知の方も多いかと思いますが、本書ではもう1歩、いや2歩も3歩も踏み込んで
考証されているので読み応えがあります。


 例えば。ジャケットの本切羽。これは寒い冬に兵隊がジャケットの袖口で
鼻水を拭いみっともないのでナポレオンがそこにボタンをつけたというウンチク。
セーラー服の襟についている三本の白線。これはネルソンが勝利してきた、
ナイル、コペンハーゲン、トラファルガーの海戦を表すというウンチク。
どちらも眉唾の俗説であると本書で説明されており、
ドヤ顔でウンチクを垂れた記憶のある私は猛省しながら読みました(笑)。



 軍服に関するウンチクはトレンチコートも有名ですよね。
バーバリーとアクアスキュータム。どちらが元祖かというアレです。
これも本書ではクリミア戦争にまで遡り言及しています。
他にもネクタイはクロアチア傭兵のスカーフ「クラヴァット」に
由来しているというウンチク、これも今のネクタイの原型である
結び下げのネクタイ(フォアインハンド)はどのようにして
生まれたかまで説明されているので勉強になりました。





なんで我々が日頃、身に着けている背広やジャケットはあぁいう形をしているのか、
考えてみたことがあるだろうか。そして、元祖の西欧人たちはいつからああいう
服装をしているのか。これは西欧人にとっては、
個人差はあれ、自分たちの歴史なのだから感覚的に理解できている
部分が大いにあるに違いない。しかし日本人には体感として
身についていない部分があると思われる。


 服飾史を知り「シャツは下着だから一枚で着るモノである」と
この亜熱帯化してきている日本で律儀にそれを守るのもナンセンスだとは思いますが、
服飾の成り立ちを理解してさえいれば、「ジャケットはダブルとシングルではどちらが格上か?」
「パンツの裾はダブルとシングルではどちらがフォーマルか?」
「葬式のスーツは黒でなければならないのか?」と悩むこともなくなり、
TPO別に細かいルールを覚える必要もなくなりますので、
この手の本を読んでみる価値はあるのではないでしょうか。
特に本書はこのボリュームで2,500円と他の服飾史本と比べ安いので
オススメしておきます。





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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 『図説 軍服の歴史5000年』の著者、辻元よしふみでございます。書評たまわりまして厚く御礼申し上げます。本書は、刊行までに4年以上の歳月がかかり、イラスト担当の玲子は、これのためもあって目を患い、緑内障でかなり部分失明までしてしまいました。それだけ苦労しましたので御取り上げいただけたことは本当に嬉しく存じております。ありがとうございました。御礼まで。

  • >辻元よしふみ様へ
    大変な力作、勉強になりました。
    是非多くの方に読んでほしいと取り上げさせていただいた次第です。

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