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脱バリュー服のススメ

 巷では、スタイリングに古着やファストファッションをMIXするのが流行っています。「安いのがエライ」「安いは正義」「買い物上手がオシャレ」。この安さ至上主義といいますか、低価格一辺倒の流れに、そろそろ、嫌気すら感じているのですが、特に、うんざりするのが「ハイ&ロー」という服のススメ方。


 確かに、安さも魅力の1つですが、その「安さ」ばかりをフォーカスしても、服の魅力は伝わらないと思うんですよ。なにより「ハイ&ロー」となぜ古着が脇役側に?と声を大にして言いたい。モノによっては古着も高いですし、安いから古着を買う、という人ばかりではないですよね。このままだと、「古着=バリュー服」となってしまいそうなので、今回のテーマは「ハイ&ハイ」です。古着を用いる嫌味なスタイル2009です(笑)「バリュー服栄えてファッション(他の選択肢)滅ぶ」という流れはもうたくさんです。古着屋も安さを売りにしているお店以外、どんどん、潰れていっていますし、これ以上は我慢なりません。



 こんな時代なので、バリュー服一辺倒も潔くていいですけど、服の魅力はコストパフォーマンスだけではないので、それを伝えられたらいいな、と考えています。この現状に何とか一石を投じたいですね。古着、ハイブランド、ファストファッション。値段を問わず、私物を何点か紹介しますが、アイテムはどれも主役を張れる一品で揃えてみました。いらない子なんていません(笑)それでは、センスのない私で恐縮ですが、こんな服好きもいるということで、1人でもファッション好きが増えることを願っております。




■重い?だが、それがいい!


リバティオブロンドン コート60s.jpg



 リバティプリントで有名なリバティ・オブ・ロンドンのコート(古着で約3万円)です。大阪だと、NU茶屋町のヴァルカナイズで新品が取り扱っていますが、ブランド名よりロンドンの高級百貨店として有名でしょうか。バーニーズNYみたいなものです。


 このコートは、60年代らしく細身でVゾーンが狭く、生地もしっかりしており、かなり重いコートです。測ると2キロもありました。今の世の中、500グラムのコートがあるというのに2キロとか(笑)昔のコートに触れると、今のコートがいかに軽いかよくわかるのですが(古着でバーバリーのトレンチを試着してから、百貨店のバーバリーに行き、似たようなコートを試着してみればよくわかります)、以前、monoマガジンで、メンズクラシックのご意見番、
赤峰先生がこんなことを述べておりました。



昔は、いまと違って寒かったからとにかく着こむしかなく、
だから昔の服はみな重いんです。でも、そこがいい、
重くない服なんか服じゃないですよ。今は軽いとか
着やすいとか機能がついているとか、そっちの方にばかり
目が行き過ぎて服本来あるべき姿が感じられません。
ヴィンテージに見られる手間暇をかけて仕事したモノに
向かい合うのが大切なんです。自分に対するこやしに
なりますね。


「重くない服なんて服じゃない」言い切った!カッコイイ!(笑)
でも、確かに、昔のは今のモノと素材や作りこみがぜんぜん違っていて、例えば、ボタン1つとってもこの違い。


リバティボタン.jpg


見てください。この40年の時を経たボタンの輝きを。鈍くて渋い光り方がたまりません。美しい。バリュー服では絶対に出せない重さと味です。



 コストを削減して作った軽くて着やすい機能的なコート。
ディテールを凝らした重くて着にくいけど雰囲気を纏ったコート。
デジタルVSアナログみたいな感じですけど、自分にとって魅力的なのはどちらでしょうか。コストパフォーマンスが高いから買うのですか?軽くて防寒性の高いアウターならダウンでいいじゃないですか。なぜ、コートなのですか?わかりやすく、昔のコートを持ってきましたが、「バリュー」「機能的」「軽い」という表面的な言葉に惑わされず、自分がコートに何を求めているのか。一度、じっくり、いろんなコートを見比べてみると、何か新しい発見があるかもしれませんよ。昔のコートを買えと言っているわけではありません。尺度はコストパフォーマンスだけではないと言いたいのです。
服に、機能性、無駄のなさ、ハイスペックというようなデジタルな魅力を求めるのか。それとも、手間暇、温もり、雰囲気というアナログ的な魅力を求めるのか。皆さんはどちらですか?私は後者です。


■シンプルが1番?否!断じて否ッ!


ポールハーデンシャツカーデ.jpg



 元ジョン・ロブの木型職人、もしくは、ハンドメイドにこだわり続ける、少数生産のブランド、という説明がお約束のポール・ハーデン。ここは靴のブランドですが、その作りが賛否両論の靴よりも、ウェア類が私は好きですね。特に白シャツ。くたっとした白シャツで、ここよりカッコイイシャツを作るブランドは、なかなか、ないのではないでしょうか。パリッとしたドレスシャツなら
たくさんありますけど。


 ここは「雰囲気」に特化したデザインが多く、どことなく、野暮ったさや温かみも感じるのですが、袖を通すと、そのかっこよさに圧倒されます。このシャツカーディガン(67,200円)もそうですが、結構、細いのですね。クラシックな雰囲気を醸し出しながら、
サイズ感は今どきでモダンです。おじさん体型だとかっこよく
着こなせないという。サイズ展開もSとXSが中心ですし。


ハーデンバック.jpg


 ちなみに、このニット、ディテールも面白くて、裾がベストみたいになっているんですよ。ご丁寧に、バックも尾錠を彷彿とさせるデザインが施されております。実は、これ、ポケットなんですね。
こんなところにB4サイズのポケットって誰得。しかも、裾より長く、でろんとぶさいくに飛び出していますし(笑)でも、こういう遊び心は大好きです。


 巷では「シンプル族」なるものが台頭してきているようですが、
スーツならいざ知らず、カジュアルファッションまでシンプルなアイテムで固めても面白くないと思いませんか?遊び心を感じるデザイン。私は好きですけどね。一見、無駄なディテールかもしれませんが、それが服の値段を跳ね上げているのかもしれませんが、その無駄が服の表情を豊かにし、スタイリングに余裕や幅をもたらすと思うのです。シンプル一辺倒は、「ファッション」から降りる第一歩だと私は考えています。それが悪いとは思いませんし、もちろん、ミニマリズムはまた別の話ですが。シンプルではないアイテムをもう1つ。


ハーデン×ターンブル1.jpg



 古着のターンブル&アッサー(約3,000円)を合わせてみました。さすが、ど派手ロンドンストライプでその名を広めただけはあり、赤、グレー、白というTHE・UK配色がどぎついですが、見せる面積さえ工夫すればどうということはありません。あまり詳しく知りませんが、ターンブル&アッサーは、今は、クリーブ・オブ・ロンドンが作っているのでしたっけ?このシャツは、年代がいつかはちょっと特定できませんが(襟の形を見るに70年代っぽいけど)、「MADE BY Turnbull & Asser」とタグに記されているので、自社生産していた頃のシャツなのでしょうね。パンツはグレーのチノパンでも合わせようと思います。


■不合理に身をゆだねてこそファッション


マックイーン2009awパンツ.jpg



 アレキサンダーマックイーン2009A/Wのパンツです(約10万円)。コレクションで見た時から気になっていて、予約して購入。
コレクションより、だいぶ、青味が強いです。色が抜けていくと
あんな感じになっていくのかなと。経年変化が楽しみ。


マックイーンチェック拡大.jpg


近くで見ると、モヘア?と思うくらい毛羽だっていますが、ウール100%です。手作業で毛羽立たせているので、1点1点微妙に表情が違うそうな。ハイウエストにチェックとトレンドのど真ん中で、シルエットは軽くテーパードがかかっています。と、スペックを簡単に書き出してみましたが、何より「雰囲気」に惹かれて購入しました。トレンド、手作業、アジが出そう、シルエット。これらは全部後付けの理由です。


 私は、パンツの上限を5万円までと決めていますが、このパンツはそれを大きく超えてしまいました。もちろん、後悔はしていません。ハイブランドの服はアウトレットやセールで安く買えますが、
そこに流れてくるのは、面白みのないベーシックなデザインや
奇抜すぎるデザインが多く、バランスの取れた「秀逸なデザイン」は少ないと思いません?ハイブランドでベーシックなデザインを
買うのもいいですが、せっかく、高いお金を出すのですから、
ブランドの「タグ」を買うのではなく、予約や立ち上がり時で
完売してしまうような、「デザイン」を買いましょうよ。
「品質(コスパ)」ならファクトリーブランド(OEM先)で買えますし。


 たとえ、ブランドに踊らされていようと、値段と品質が釣り合っていなかろうと、予算オーバーだろうと。理屈じゃないのです。世間が納得のいく理由を探さなくてもいいのです。値段に限らず、ファッションは合理的にできていません。むしろ不合理です。
気分次第で掌をコロコロひっくり返しながら、既存の価値観をどんどん崩していきます。そんなものです。考えたって正解は出てきませんので、その服が気に入ったらおとなしく買いましょうよ(笑)
変に斜めに構えたり、理論武装したり、他人と足並みを揃えたりする前に。ファッションが好きならば、単純に、目の前のトレンドに、服に、カルチャーに飛び込んでしまえばいいのです。
「不合理に身をゆだねてこそファッション」です(笑)


 予算を「倍プッシュ!」する男気も時には必要ですよ。失敗したら痛手を負う。ぎりぎりの緊張感。感性を研ぎ澄ましショッピング。心のざわめきが聞こえる中、今まで見えなかった何かも見えてきます。カードの支払いに苦しむ姿かもしれませんが(笑)そこは、皆さん、そうならないよう、上手くやりくりしてください。


+J+サスペンダー.jpg


 +Jのシャツ(3,990円)を合わせてみました。いわゆる「ハイ&ロー」です。テーマは「ハイ&ハイ」ですが、ファッションも私も不合理なので、時には、こんなこともあります(笑)マックイーンのパンツはクラシックなディテールでして、もちろん、ベルトループなんてありません。裾上げした布でベルトループをつけようと思いましたが、せっかくのハイウエストなので、サスペンダーで吊って楽しもうと思います。サスペンダーはサチーク(セールで約6千円)。レザーのハンドメイド。本当は、もう少し、ウエストの位置が上なんですけどね。人が着ないと厚みが出ないのでこの位置に。白シャツ、ウールスパンツ、サスペンダーというおじさんっぽい組み合わせでも、こんな感じで、モードっぽくシャープにすることは十分できます。サスペンダーあると便利ですね。


■履けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる


アランマカフィー60.jpg



 60年代のアランマカフィーのドレスシューズ(9,240円)です。
イギリスのビスポークブランドですが、 80年代にチャーチに買収されたので、古着屋でしか手に入りません。


アランマカフィー ロゴ.jpg


ビスポークだけに、いい革を使っているので、深い皺がついていませんし、何より、茶色の深みが素晴らしい。これぞ、ヴィンテージ。問題は、私には、渋すぎるということくらいでしょうか(笑)



マックイーン2009チェック.jpg



 でも、マックイーンの2009A/Wで、上のチェックのパンツに、この靴みたいな色のドレスシューズを合わせていたので、真似してみました。パンツが強烈なので、渋さが緩和されますね~。


 古着の靴はサイズが難しく、ほとんど、足に合うことはありません。でもそれがなんだというのです(笑)サイズが大きすぎて、
いわゆる「デカ履き」という状態になっていると問題かもしれませんが、1㎝くらいなら、インソールと靴下でなんとかなるものです。古着の靴はサイズが合いません。だから、自然と、インソールや靴下に凝るようになります。厚いのから薄いのまで揃えるようになり、微調整が無駄に上手くなっていきます。これが、既成靴で役に立つのです。ビスポークは別ですが、既成なら靴が足に合わないなんてザラです。それでも、その靴のデザインがいい。その靴が欲しい。あなたならどうしますか?賢明な人なら諦めるでしょう。
しかし、どうしてもその靴が欲しい!フィット感よりデザイン重視!という人もいますよね?そんな時に、経験が生きるのですね。大きめの靴を持ってきてもらい足を入れる。その入れた感触で、このインソールと靴下でいけるな、と判断できるのです。あとは、その靴をキープしてもらい、後日、インソールと靴下を持ってきて
試着すれば解決です。


 服でも同じですよ。徹底してマイサイズにこだわるのがベストですけど、極端な話、それだったら、オーダーで買えばいいじゃないですか。でも買わないのは、心に決めた好きな子がいるからですよね?それか運命の出会いを期待しているわけですよね?(笑)なら、少々サイズが合わないくらいだったら、工夫すればいいじゃないですか。そのサイズ感を楽しんだらいいじゃないですか。お直しに出すという手もありますし。既成服には、それくらいの心の余裕が欲しいところです。それに、本来、体に服を合わせるのがオーダー、体を服に合わせるのが既成服ですよね?体にピッタリ合う方がラッキーなくらいなので、サイズ、コスパ、値段で弾くのではなく、服との出会い、自分の直感、欲しい(その服が好き)という気持ち。それらを優先するのも悪いことではないと思います。


■スタイリング


ハイ&ハイ スタイリング.jpg



 「ハイ&ロー」と、ファッションで安さばかり追求しても面白くないので、今回は「イギリス」「クラシック」「雰囲気」にこだわって揃えてみました。ヴィンテージ(60年代)×ハイブランド(モード)の組み合わせで、古着と合わせやすいポール・ハーデンはクラシックとモダンのつなぎ役として使っています。あとは、マックイーンのパンツが経年変化で色褪せると、より雰囲気が出るハズ。


 画像は、若干、雰囲気を強調しましたけど、どことなくのっぺりしていて、深みのないバリュー服には出せない雰囲気だと思いません?必要以上に、安さばかりを求める、今のトレンドはちょっと寂しいですよね。合理性ではなく、ある意味、無駄の追求こそ、ファッションの醍醐味だと思うので、「コスパ・作り込み」「シンプル・遊び心」「合理・不合理」「サイズ・デザイン」などなど、
自分の考える最善の尺度からあえて外れてみるのも、たまにはいいと思いますよ。選択肢は、ほぼ、無限にあります。その最善は思い込みかもしれませんし、また違った服の魅力が見えてきたりすることもあるでしょう。


 それに、ファッションで費用対効果を競ってばかりいても息苦しいじゃないですか。自分の好きな服を買い、さまざまな制限の中でそれらを組み合わせ、こだわりや服の背景を掘り下げていく。その過程が楽しいんですよね。「ハイ&ロー」と無理に「ロー」を
組みこまなくても、「ハイ&ハイ」でもいいじゃないですか。
好きな服で全身固めたらいいじゃないですか。むしろ、それでいいのだ!





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